二宮 未摩子氏(株式会社TRULY)
不安や悩みを共感・共有できる存在がいることの重要性、自身の経験から生まれた”TRULY”のサービス
―“TRULY”を立ち上げたきっかけを教えてください。
幼い頃から美や健康に人一倍興味があり、所属企業では希望して美容・健康系のクライアントを多く担当させていただきました。
そんな中、「シニア市場」をテーマにした社内ベンチャーの企画コンペに携わる機会がありました。“表面的な美”ではなく“本質的な美”を追求したかったため、当初は大人の女性に広くあてはまる“トータルインナービューティー”事業として、美容、食、運動、女性ホルモンなどマルチカテゴリーで女性をサポートする事業アイデアを検討していたのですが、より具体的に顧客や課題を絞ろうと模索しているうちに、全ての女性の課題であるにも関わらず、タブー視されていて情報がオープンになっていない「更年期」というテーマに行き着きました。
この課題を設定したとき、10年前の妊娠時の原体験とも重なりました。当時、私は激しいつわりに悩まされており、まだSNSなども普及していなかった頃なので、自分の不安や悩みを誰にも話せない辛さがありました。「女性ホルモン」の不調による心や体調の変化は、人にとても相談し難いことを実感しているなか、更年期に関するサービスが無いことに気付き、“TRULY”のコンセプトができていきました。
―最初は社内ベンチャーという形で始まったんですね。
そうですね。最初は所属会社と投資会社との共同事業として立ち上げることを想定していましたので、当時はまさか自分がスタートアップ経営者になるとは思ってもいませんでした。しかし、企画が通った後、社内での扱い方や、投資判断が上手く定まらなかったんです。
―そこから出向起業に至るまではスムーズでしたか。
なかなか社内調整が進まない中、共同事業先として提案した投資会社から「あなた自身が経営者になってやればいいのでは」といった提案をいただきました。結果、所属先からは出資ではなく、人材を投資するということで話がまとまり、結果的には「出向起業」としてやってみようということになりました。社内でこのスキームが増えるのか、増やしたいのかはまだわかりませんが、私がモデルケースになって成功すれば後に続くことになるのかなと思っています。
様々な要因が重なった末の「出向起業」が、結果的には自分に合うスキームだった
―社内で始めての「出向起業」というケース、周囲の反応はいかがでしたか。
出資検討には時間がかかりましたが、その間も変わらず実現のために応援し続けてくれた投資家との信頼関係と、年内にという出資期限が出されたことをきっかけに、上長をはじめとする周囲が実現に向けて一気に動いてくれました。当時の部長や局長は組織の話になるので、人事や経営企画、法務、あらゆるトップと調整してくれて、そこからはスピーディーに決定しました。
私自身は並行して法人設立に動きました。アメリカの投資会社からの出資を受けるにあたって、日本での法人口座を開くための審査もあるので、間に合うかハラハラしましたが、12月25日、クリスマスになんとか間に合いました。
―「出向起業」という選択をどう思われていますか。
それまで私は、経営やビジネスの勉強をしてきませんでした。もともと起業マインドが高かったわけではなく、社長になる自信もなく、失敗した時のキャリアの不安が大きかったので、今の段階で辞めて独立するのは早いと思いました。まだまだ日本は女性起業家の数も少ないですし。
また、営業先開拓には所属会社のネットワークを活用することができます。当然、クライアントからの収益をどう生み出すか、そこは出向起業者である私のミッションでもあると思っています。
―補助事業期間はどこに重点を置いて進められますか。
1番にやりたいことは、閉ざされている更年期や女性ホルモンの課題を、女性だけでなく社会全体に伝えていくことです。そのために、まずはオウンドメディアでコンテンツを配信します。一人ひとりの悩みを解決するための相談サービスも提供しています。今はまだベータ版ですが、これからコンテンツを増やし、より良いサービスにして、多くの女性に利用いただけるようにしていきます。
提供するコンテンツの信頼性を考えても、まずはドクターと組むのが一番だと考えています。今後は、学会やNPO、更年期課題を扱う企業などとも連携し、もっといいサービスを提供していきたいと思っています。
―その先の中長期、5年後10年後の計画を教えてください。
解決したい課題は更年期だけではありません。妊娠時の悪阻や生理のつらさなども含めて、女性ホルモンの課題全体に対して取り組み、タブー視されがちな悩みをオープンにしていければと考えています。更年期はあくまでスタート、女性ホルモンをみんなが理解できるように。また、男性にも更年期はありますので、性別関係なく、閉ざされた悩みに寄り添えるようにしていくことを考えています。
これから起業を考える人は、辞めて独立する前に一度立ち止まって、あらゆる手を探ってみてほしい
ー補助金の制度を知ったきっかけを教えてください。
事業相談でお話を伺っていたアクセラレーターから紹介いただいたのがきっかけです。エンジェル投資まではビジョンへの共感などで調達できたとしても、やはりシード以降の調達にはプロダクトと実績が必要になります。そんな中で、実績を作るための初期費用に、500万円の補助金の支援があるのは非常にありがたいです。
―起業を迷っている方へ、一言メッセージをいただけますか。
同じような立場で新規事業の立上げようとする方へ、辞めて独立する前に、あらゆる手を探ってみるというのを勧めたいです。この「出向起業」の取組は着想も素晴らしいし、必要な支援だと当事者として感じています。
人材を出す企業にとっても起業人材を現場で育成できるメリットがあるのではないでしょうか。
二宮 未摩子氏
CEO
自己紹介/略歴:
2007年某広告会社に入社。
営業職として通信キャリア、大手エステティックサロンを担当。
入社3年目の妊娠時、働くことが困難なほどの激しいつわりを経験し、女性の心と体は女性ホルモンの影響を強く受けることを痛感する。
職場復帰後、社内の開発部門を経て、女性向けの商品開発プロジェクトを立ち上げ、2019年「TRULY Inc.」を起業。10歳男児の母。
「女性の「更年期や閉経」に寄り添う、オンライン相談プラットフォーム」について
すべてのオトナ女性が経験するのにもかかわらず、タブー視され、語られることが少ない更年期などの女性ホルモンの悩みに、寄り添ってサポートするフェムテックサービス※。
「更年期」によるキャリアへの影響に不安を感じる女性は多く、実際に更年期を理由に昇進を辞退、退職するなどの経済的損失は今後の社会課題であり、企業や社会で向き合う必要がある。
※フェムテック(Female&Technology)とは、テクノロジーを使って女性の健康ニーズに取り組むこと。
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