角岡 幹篤氏(Buddyup株式会社)

Q.これまでのキャリアについて教えてください。

私のキャリアは「協力の研究」に特化しています。

私の父は鉄工所で働きながら農業を営み、何でも作ることができる人でした。そんな父の背中を見て育ち、私もいつか多くの人の役に立つものを作りたい、中学生の頃には、勢い余って将来の夢に「世界中の人の人生を底上げする」と書いた記憶がありますが、今でもその思いが心の奥底にあります。

大学では神経生物学・知能情報学を専攻、全人類にリーチするなら「医療」か「IT」だろうかと考えた結果、再現性が確実なITの道を志し、株式会社富士通研究所に入社したのが2005年になります。入社後は電話システムやネットワーク通信の研究部で従事していましたが、次第に研究分野が下火となり、テーマの募集が行われるようになりました。それを好機と捉えて、自動で日程調整ができるスケジューラやタスクを立案すると自動で適任者が提案されるツールなどの研究提案を行いましたが、力及ばず実現できませんでした。

そして2018年からイベント連動型のマッチングアプリ「Buddyup!」の開発を開始しました。この活動は社内で高く評価をいただき、研究開発のための部署も新設され、数十の実証実験を通して2万人の利用者を獲得することができました。ですが、事業としてはまだまだ超えるべき壁があり、現在進行形でその難問に取り組んでいるところです。

Q.新規事業(申請事業)のアイデアはどのように着想されたのでしょうか? 何かきっかけとなった出来事などがあれば教えてください。

大学時代、私の学科では多様な専攻を横断してクラス分けが行われていました。無関係な集まりですから・・1年を待たずすぐに疎遠になるクラスが多い中、私のクラスだけは数年にわたって協力関係が続きました。その原因として言われたのが独自の「名簿」です。将来の夢・取得講義・趣味・出身など、人と歓喜絵をポイントが早期に共有できたため、短期間で高いエンゲージが生まれていました。これが名簿の効果を実感した最初の出来事でした。

その後、社会人となった私は、多様な技術者が集まって短期間で大量のプロトタイプを作る取組(ハッカソン)を知り、その魅力に取りつかれました。参加者が相互に触発されて熱狂的に開発する姿はまさに爆発。すごい熱気と情熱を感じました。同時に、爆発の熱量が「人の組み合わせ」や「相互理解のスピード」に依存することを実感しました。今思えば、それが、最短距離の相互理解とマッチングを目指す名簿「Buddyup!」の開発へとつながったのだと思います。

Q.アイデアを事業化へと行動に移された理由を教えてください。

企業研究者の責任として、常にビジネスになる研究をすることを心がけていました。大企業だからこそできる大型事業を構想し、その研究開発を進めていました。インスパイアを受けたのは、マイケル・ポーターのTEDトーク「なぜビジネスが社会課題の解決に役立ちうるのか」でしょうか。活動の利益で新しい人を雇えば、活動を拡大再生産することができると教えてくれています。事業として成立するからこそ、よいアイデアをより大規模に実現できると考えています。

Q.出向起業制度の活用にあたって、社内調整はどのように進めめられたのでしょうか。

10年ほど前、社内を活性化する取り組みを行い、社内表彰をいただく機会があり、その際に社員側が責任をもつ形の新規事業制度(副業型新規事業制度)を経営層に直訴したことがありました。当時の社長はCTO、CMO、CFOを呼び集め、真摯に私の話を聞いてくれました。CTOとそのスタッフ、その他たくさんの方が協力してくれて、1年をかけて制度策定にチャレンジしましたが、時代が違い、制度を実現できませんでした。

10年後、今回の出向起業の調整は3か月でスムーズに完了しました。経産省事業として「出向起業」の公募が行われており、社内外の理解が進んでいたことが大きかったです。ただ、個人情報を新会社に移転させる手続きなど、法的な手続きは簡単ではなく、出向後も解決に向けて会社と協力して取り組んでいます。

Q.出向起業への応募に対して、所属企業の周りの社員の方、ご家族や身近な方の反応はいかがでしたか。

出向起業を実施したこと自体は、ごく限られた方に報告するに留めているのですが、私のこれまでの活動を知っている方が多いので、シンプルに応援してくれています。「手伝えることがあったら教えてください」などの暖かいメッセージをいただくこともあり、本当にありがたいです。一緒にビジネスを進めてくれるという事業部の方もいらっしゃって本当に心強く感じております。

妻は「へー、そうなんだー。給料どうなるの?」と。当面は大きな変化がないことを伝えると、「それならまあ、頑張って」っていう感じでしたね。家族がおおらかに構えてくれていると、安心できていいですね。

10年前、経営層へ直訴に協力してくれた仲間から胡蝶蘭が届きました。それまであまり実感がなかったのですが、胡蝶蘭を目にした時からふつふつと起業したことに実感がわきました。毎日、やる気をもらっています。

Q.まず実現したいこと、目標やビジョンがあれば教えてください。

日本の組織を縦横無尽につないで、いたるところで爆発的な効率性の向上とイノベーションが実現できる状態を目指します。

まずは、業界団体や学術研究団体において令和型の名簿として機能し、入会やイベントの際に集う方々をつなげます。また、大企業や、中小企業を含む企業グループにも広がれば、企業合併や中途入社の際にどういう人がいて誰と話せばよいのかという不安をAIが紹介してくれることで解消される、そんな状態を当たり前にしたいと考えています。

各企業の新入社員懇親会の名簿として利用いただければ、「日本の新入社員は相互につながる準備が出来ている」というメッセージを社会に発信できます。これをきっかけとしてONE JAPANや経団連など各種の交流団体を経由して、新入社員だけでなく、日本全体の組織メンバーをつなぎ、応援する名簿として機能し、日本の活性化に貢献できればと思っています。

Q.出向起業にあたっての意気込みをお聞かせください。

せっかく頂いた機会ですので、しっかりと生かして成功したいと思っております。

私たちは4人という少人数のチームではありますが、研究員としての研究能力に加え、新規事業を進めるうえでの顧客開拓からソフトウェア実装、セキュリティの維持管理に至るまで、クオリティの高いSaaSサービスをリアルタイム運用・開発する力をそれぞれが所属元企業で培ってきた精鋭揃いです。

会社の枠を超えて送り出してもらえたからには、サービス利用者はもとより、所属元企業にも社会にも大きな利益を還元できるような会社へ、もっと言えば、出向起業ならではの、日本のデジタル収支の改善に役立つ大きなサービスに育てられたらと思っています。

「人をつなげる新時代の名簿の実証事業」について

令和の名簿「Buddyup!」は、令和の技術で名簿を徹底的に改善したものです。

組織における人の入れ替わり、ワークショップや交流会などの出会いの機会。名簿が強力であればもっと自然に仲間を見つけられるはずです。AIによるマッチングと動画等による新鮮な体験、さらにSaaS上で次々と開示される「つながりレシピ」で組織のチカラを最大化します。

組織内の情報の標準化が完了すると、組織間をつなぐことができます。人を中心にあらゆる組織をつなぐ名簿にご期待ください。

角岡 幹篤氏

すみおか もとし

代表取締役

自己紹介/略歴:

2005年 京都大学情報学研究科修了。株式会社富士通研究所に入社。
2015年 Open Network Lab Seed Accelerator Program(法人向け教育枠)修了。
2016年 大企業の若手中堅有志団体の実践コミュニティONE JAPANに参画。
2024年 Buddyup株式会社設立。
人がやりたいことを形にするまでのプロセスと、人と人の協力関係の構築をテクノロジーで支援する研究に従事。社内外でハッカソンを主催。Buddyupサービスを自ら実装している。

Profile Picture

会社概要

所在地神奈川県川崎市
WEBサイトhttps://buddyup3000.com/
問合せcontact@buddyup3000.com