馬場 基文氏(株式会社CyberneX)

大企業出身であることの強みを生かした、CyberneXだからできるスタートアップを目指す
―“Cybernex”を立ち上げたきっかけを教えてください。

私の原点は0から1を生み出す、世の中に新しい価値を生み出すというところに価値を感じて、一貫してそこに拘ってきました。

最初のキャリアは研究所で、「発明」に取り組んでいましたが、その後、発明した技術を社会実装していくプロセスとして、技術開発、商品開発、モノ作り生産調達、マーケティング、営業と、上流から下流までを全て経験しました。2015年までは、社内の既存事業の成長に資する「0→1」を生み出すという立場を担っていましたが、2016年から、既存事業に拘らず「0→1」を生み出すために、H・チェスブロウが提唱するオープンイノベーションの手法を取り入れ、外部のスタートアップ等との交流により、様々な事業アイデアを創出しました。そのうちの1つをスピンアウトする形で事業化、CyberneXの設立に至りました。

―スピンアウト に至った経緯は。

経営層が変わったことも大きかったと思います。既存事業とは距離があるこの取り組みを継続するのかしないのか。正解は無いのですが、新しい経営層は継続しない判断をし、既存事業の変革業務を勧められましたが、私自身は最後までやり切りたいという思いと、社会だけでなく会社へも貢献できる価値があるものと確信していましたので、結果、スピンアウトの選択をしました。継続しないという判断ですので、所属元会社から出資はありませんが、技術資産や知的財産の譲渡については承認いただきました。

CyberneXの事業スキーム
CyberneXの事業スキーム
―社内と社外の違いは感じていますか。

スタートアップと一緒にプロジェクトを進めた経験の中で、スピード感や雰囲気はなんとなく分かったつもりでしたが、実際にその立場になってみると、簡単には考え方や進め方を変えることができず苦労しました。大企業にいた時には様々な業務を周囲がやってくれていた、守られていたことを痛感しました。我々は大企業の整理された、抜け漏れがないフローやプロセスと、スタートアップのスピード感をうまく融合し、大企業出身の強みであるノウハウは活かして、価値創造に重きをおいた我々の特色が出せるスタートアップを目指したいと思っています。

素人こそ最強。常識に縛られない考え方で独自性を打ち出し、仲間と共に価値を生み出していく
脳波の測定・分析というプロダクトに至ったのは、オープンイノベーションの手法で実践してきたアイデアの1つということでしょうか。

そうです。段階的に絞っていきました。我々は脳波の専門家ではありませんが、私は「素人こそ最強」だと考えています。素人は常識に縛られない考え方ができますし、私自身、様々な分野で、素人としてアイデアを考え、実践し、実績を出してきました。8割の人が否定しても2割の人が共感する、そういうものにこそ大きなイノベーションが潜んでいると感じます。変わった人だと言われるかもしれませんが、うまく突出しながら、その特色を独自性として打ち出していくことが重要だと思っています。

―その思いは一緒に進んでいかれる皆さんと共有されていますか。

一緒に働くメンバー全員、新しい価値を生み出したいセンスのある人、私から声を掛けた人ばかりです。会社にとって、“人”のパワーは強み、極めて重要です。未知の領域にチャレンジするという想いを共有しつつ、多様性のあるメンバーそれぞれのアイデアをぶつけ合う、そのプロセスの中でメンバーは毎日成長し、気持ちも変わっていきます。どういう風に変わったか、発信したり、影響を与えたり、そのプロセスこそが価値を作ると思っています。

CyberneXメンバー
CyberneXメンバー 左から 有川 樹一郎氏、馬場 基文氏、木村 努氏
―同席いただいている木村さん、有川さんは、いかがですか。

(木村氏)自身のキャリアは30年近くになりますが、ずっとひとつの事業会社にいると、今後の方向性や、やろうとしていることは大体想像の範疇になり、かといって新しいことを始めようとしても少なからず制約があります。ここにいる馬場の職場を訪ねたのが2015年、こうやって実現させるやり方があるんだと知りました。

社内ではなく、社外で資金調達をしたり、会社を設立したり、こういう経験は人生の中で1度あるかないかだと考えた時、このチャンスに乗って新しい世界を見てみたいと、社外へ飛び出した状況です。

(有川氏)私は9月頃からの正式な参加を予定しています。以前、馬場が所属元企業でやっていたのが、研究所から生み出した技術を使って、市場の中でも競争力を生み出していくようなことで、そこにすごく憧れました。何年後かに同じアプローチを実践してみたのですが、もう世の中の市場は急速にコモディティ化が進んでいて、インパクトをつくれなかった。

仕事面でのスキルはプラスになりましたが、やったことの社会への影響は少なく、利益につながらない、非常に悔しい経験をしました。そこで、馬場が新しいことをやろうと作った0→1の部門に異動させてもらい、一緒にチャレンジし始めたのが1年半前ぐらいで、今はその延長戦と言う状態です。何か社会にインパクトを残すにはこれしかないな、という思いでこの会社に合流することにしました。

「出向起業制度」は資金面の補助だけでなく、新しい挑戦に踏み出す背中を押してくれる
―スピンアウトして社外に出た今、所属元企業とはどういう向き合い方を続けていきますか。

良好な関係であり、その関係を維持・発展させていきたいと考えています。経営層が明確な判断をしてくれた結果、こうしてスピンアウトできました。大企業ではその判断自体が下されず、動けないままのケースが多いと思いますので、判断をしてくれたこと自体に感謝しています。成功して恩返ししたいと思っています。

―資本関係が無いなか、配当でもキャピタルゲインでもない「恩返し」の仕方があるんですね。

お金ではなく、やっぱり価値は人がつくるんですよ。人と人との関係の中から、今後仕事で「恩返し」をする新しい関係が生まれればと思っています。その中で価値が生まれるし、メンバーは1日1日成長していきます。我々が成功することで、会社も従来とは異なる取組み方で新規事業を創出しようとする必要性を感じてくれる、挑戦しようとする人材が現れる、そんな形で会社には還元ができればなと。

―ちなみに「出向起業」というスキームはどう思いましたか。

(有川氏)やはり大企業という大型客船から小さい船で漕ぎ出す時、自分がどこにいるのか不安になります。今回「出向起業」という事業に採択されて、国が考える方向性と自分たちの考えに接点が見えたことで自分の立っている場所を確認でき、背中を押された気分になりました。

補助金というお金の面ももちろんですが、補助金申請から今に至る過程全てがスタートするにあたってエネルギーになっています。

我々はシードで立ちあがったばかり、潤沢な資金を持っているわけではないので、お金の面での補助金という支援があるというのは大きいです。直接的な行動が出来ていない人に、まずはやってみることを勧めたいですね。

馬場 基文氏

ばば もとふみ

代表取締役

自己紹介/略歴:

1997年4月:富士ゼロックス(株)入社、総合研究所
2004年4月:技術開発本部,新規技術開発業務(ハード及びソフトウエア)を担当
2010年8月:商品開発本部マネージャー職,技術の商品化管理を担当
2013年10月:商品開発本部グループ長職,商品技術戦略責任者
2017年4月-2020年5月:研究技術開発本部 部長職,新規事業開発責任者

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「イヤホン型脳波計の用途開発に向けた実証事業」について

・脳波活用ビジネスのポテンシャルは高く、グローバル市場は2024年に4.5兆円規模へ伸長すると予測。生体情報活用による新規サービス創出および脳活動情報をより簡便に取得というニーズがある一方で、既存プレイヤーは限定した領域に特化している。
・申請者は日常的に脳波を測定できる独自技術を用いて簡便なイヤホン型脳波計で各領域に横串で取組むことを目的に、所属元企業から知財権および技術資産譲渡を受けて本年5月に法人設立、In Ear Computing 領域の研究・開発を進めていく。

CyberneX 実証事業

会社概要

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問い合わせ先info@cybernex.co.jp
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