松本 恵氏/大橋 優也氏(株式会社Every Buddy)

自身の実体験から生まれたアイデアを元に事業化へ
松本さんの出向起業に至った経緯をお伺いできますか。

(松本)元々南海鉄道が直営店として運営していた店舗でアルバイトを続けながら並行してバンド活動も行っており、楽しんでいた中、メンバーが活動できない状況になったことで、活動を休止しました。それから何十年か経ち、またバンド活動を始めたいと思い、メンバーを探そうとしたら、これがかなり大変で。音楽活動を始めようとする際の環境は、この何十年で改善していないことに驚きました。

その後、南海フードシステムにて、契約社員採用の後に正社員として雇用されて店舗マネジメント業務などに従事していたときに、新規事業開発プログラムの募集があったんです。グループ社員含めて夢を持つ社員や思いのある社員は応募して欲しいというもので、私自身の音楽活動再開の難しさを改善したい、同じ様に悩んでいるプレイヤーを助けたい、そのためにできることがあるのではと手を挙げたのがきっかけです。

大橋さんとはそのプログラムで知り合われたんですね。

(大橋)私は、芸人を目指していたところを挫折、友人からフェスに誘ってもらったことが救いになり、音楽やフェスへより関心を持つようになりました。その後、25歳の時に南海鉄道の工務係として入社しましたが、フェスを開催・企画したいという気持ちがずっとありました。今回の新規事業開発プログラムの前にも社内ベンチャー制度へ応募したのですが、納得いく結果ではありませんでした。その後本社に異動しましたが、このフェスを開催・企画したい、自分のアイデアを聞いてもらいたいという気持ちが捨てられなかったところに、新規事業開発プログラムが始まったんです。

私自身はリスナー側ですが、プレイヤー側の困りごとを解決した結果、リスナーにも影響がある・戻ってくると感じて、松本さんの事業に参画することにしました。

新規事業開発プログラムを通じて開発したサービスを教えてください。

(松本)私自身、音楽仲間を探すことに一番困ったので、そこを解決するためにまず作ったのがメンバー募集マッチングサイトです。昔はメンバーを募集する際にはスタジオに貼り紙を貼っていたんです。もちろん今はオンラインの掲示板とかWEBサイトもあるんですが基本は掲示板でのやりとりが主流で。全く反応が無いと結構気持ちとしてきついんですね。そこで、能動的にコミュニケーションを取れて、反応が返ってくる仕組みがあれば、メンバー募集のモチベーションが続くのではないかと考えました。

音楽活動仲間を見つけるには、掲示板サイトに書き込んだり、SNSで募集は難しいんですね。

(松本)私自身はそれで2年掛かりました。掲示板は記事をアップして、それを見て書き込んでいくのですが、時間がたつと流れていってしまうので、毎日更新しないと表示されづらくなってしまい、本気で探そうとすると大変なんです。これだけ出会い系のアプリとかがあるのに、バンド版のマッチングアプリがない。あったら絶対便利なはずだと思ったんです。

掲示板やSNSでの使いづらさに対して、マッチングサイトではどういう工夫をされているんですか。

(松本)自身のプロフィール、基本情報を入力した段階で相性の良い人とマッチングします。マイページに相性の良い人が表示されるようにしていて、個人ベースでリコメンドしているんです。相性は年齢や地域、演奏している楽器やジャンル、好きなジャンルの情報などから選定しています。

(大橋)あとは性格なども重要な要素で、相性診断のような機能も必要だなとは考えていますが、現時点ではまず会うまでの時間を短くすることに注力しています。

(松本)大学の軽音部の同期とかで見つけられる人もいるけれど、元々の仲間がいない人は困るんですよね。

マッチングサイトにはどれくらい人が集まってきているのでしょうか

(松本)まさにユーザー集めを進めているところでして、現在約800名。マッチングサイトとしてはもっと母数を増やす必要がありますね。あとは、音楽活動にはメンバー募集以外にも、時間的制約や経済的制約などの課題もあり、それらを解決するために音の重ね録り機能や、地域のスタジオ利用料割引などの機能開発を進めてきました。

(大橋)色々と制約を減らす施策は打ってみたのですが、やはり「音楽をやりたい」と強く思うことが一番大事で、やりたい気持ちがあればちょっとした制約は乗り越えられるのではということに行き着いて、ちょっと始めてみようとした人にきっかけを与えるためのイベントとして、企業テーマソング大会を企画しました。

オフラインで集まることのできない今だからできる”オンライン”でのイベント企画
マッチングしたら次は活躍の場が必要ということですね。

(大橋)テニスだとマッチングした時点で練習や試合をするという話になりますが、音楽は演奏するなら聞いてもらいたいですよね。次のステップアップとして発表の場を提供したかったのですが、コロナの時期と重なってリアルイベントの協賛を得るのが難しい状況でもありました。ただ、今の時代は個人で動画をアップする人も多いので、そういうニーズがあるのでは、とオンラインでのテーマソング大会を企画しました。

(松本)まずは実証実験として当社のテーマソング大会を企画したんです。そこに60曲以上、ユーザーも100名以上集まりました。中には海外からの参加者や、クオリティの高い曲も集まったんです。その結果を持って、マクセル様へ提案したんです。マクセル様は40−50代の方からするとカセットテープで認知されていますが、若年層など他の世代からはどうなのかということと、音楽と親和性の高い企業なのでテーマソングを募集することでユーザーに興味を持ってもらえるのではないかという提案をしました。結果、興味を持ってもらいコラボのイベントを実施することができました。

Every Buddyのサービス
イベントによって、音楽活動が再開されたのでしょうか

(大橋)参加して曲を作ってみた方の8割がコロナ禍で活動できていなかった方で、この企画があったから活動を再開したというコメントもありました。また、初回参加者の40%ぐらいが2回目にも参加してくれていて、音楽活動の継続につながりそうな結果はでてきています。

あとは当社でYouTube番組を持っており、そこで賞を取った方だけでなく、参加してくれた方もコンテンツとして紹介するようにしていき、より活動再開や活動継続につながるようなイベントにしていきたいと思います。

一人でも多くのプレイヤーを、それぞれのステージへ
この事業期間でやろうとしていること、ビジョンを教えていただきますか。

(松本)まずイベント自体を、音楽活動の再開・継続のモチベーションを高めるものにブラッシュアップしていくことです。そこでイベントの形がみえてきたら、それを仕組み化していき、マッチング側とのつながりを作っていければと思います。登録ユーザー数は現在約800名ですが、1年で1万人まで増やしていくことを目標にしています。

(大橋)当社でビジョンとして掲げている“一人でも多くのプレイヤーを、それぞれのステージへ”が最終的な目標です。休眠層の方に対してそれぞれのステージを作ることを目標にしたいですね。

出向起業という制度はどう思われましたか。

(大橋)我々は去年の11月から今年の3月末まで、新規事業プログラムを運営していたボーンレックス社への出向を経験しています。その時にマクセル社とのイベント企画も経験しましたので、社外で活動するスピードを実感しました。その出向に起業経験がプラスされますので。さらに感じるものが違ってくると思っています。

(松本)出向起業という制度はありがたいですよね。“出向”なので南海電鉄の名前も使わせてもらえる、おいしいとこどりという面もあります。関西圏、特に大阪でのネームバリューの強さが一番だと思いますが、東京でも鉄道会社という安心感は持っていただける印象です。

これから出向起業に挑戦する人、検討する方にメッセージをいただけますか。

(大橋)外に出ると、本当に知らない言葉が飛び交うんです。そこに最初は敷居を感じました。ただ、それだけではなく、泥臭いところも事業を進める上では必要だと学びました。何かやってみたい、思いがある人は、まず走ったみた方がいいのではないでしょうか。

(松本)新規事業って、特定の人が知識を蓄えた上で、やるべくしてやることという印象でしたが、そうではありませんでした。私も大橋さんも、新規事業は全く関わりのない、むしろ正反対のキャリアにいたので、私たちでも挑戦できるんだということを新規事業開発プログラムで教えてもらいました。

理論も大事だと思うんですが、理論では人は動かない。人を動かすのは思いや熱意だと思うんですよね。そういうたくさん思いを持った人が活躍できる場があるのであれば、ぜひ挑戦して欲しいと思いますし、そういう人のための出向起業かなと思います。

松本 恵氏

まつもと めぐみ

代表取締役社長

自己紹介/略歴:

駅チカ・駅ナカにある店舗の運営事業を行う所属元グループ会社に所属、既存店舗の運営や新規店舗の立ち上げ、マネージメント業務に従事。
その後、同じくグループである親会社の事業開発部に兼務出向となる。
新規事業開発プログラムへの参加を経て南海電気鉄道(株)へ出向、現在に至る。

Profile Picture

大橋 優也氏

おおはし ゆうや

代表取締役副社長

自己紹介:

その昔夢破れ挫折していた時に「音楽」だけが自分を救ってくれました。
南海電気鉄道(株)では主に鉄道のメンテナンス業務に従事。その後、社内「新規事業開発プログラム」に参加、共同代表となる松本氏の話を聞き「プレイヤーの環境を変えることは、リスナーにとっても良い環境になるはず」と、共に頑張る決意をし、現在に至る。

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「ミュージカルライフサポーター」について

音楽活動を中断・または休止している『休眠層』のプレイヤーは、楽器経験者の約80%存在しています。

本事業では、休眠層の中でもアマチュアのクリエイトプレイヤー(楽曲創作者)を中心に、気軽にテーマソングやオリジナルソングへの応募を行うことができるプラットフォームを提供。

プラットフォームを基軸に楽器プレイヤーを取り込むことで、アマチュアプレイヤーに活動するモチベーションを持ち続けてもらうため、活躍する機会や場所、金銭的メリットも提供できるような音楽活動トータルサポーターを目指します。

会社概要

社名株式会社Every Buddy