白石 隆氏(Frontier M&A Partners 株式会社)

約25年の飲食営業キャリアの中で、ずっと構想していたM&A仲介・コンサル事業
まずは白石さんのこれまでのキャリアについてお伺いできますか。

(白石)サントリーホールディングスに1998年に入社、一貫して飲食店向け営業に従事してきました。四国、大阪支店の勤務後、飲食店を支援する部署立ち上げに携わるなどして、直近は東海支社の支店長として営業開拓を行ってきました。

飲食店営業というキャリアの中で、いつからこの事業を考えていたのでしょうか。

(白石)飲食業界専門のM&A仲介事業という構想は、実は10年近く考えてきました。そもそもサントリーとして、飲食店向け事業をどう強化するか…という課題があったこともありますが、私自身も一貫して飲食店営業に従事してきた経験において、飲食店経営の課題を非常に感じていました。

どういった課題を感じていたのでしょうか

(白石)業界全体として廃業率が高い中、圧倒的に後継者が不足している点です。そのため、特に小規模チェーン店などは、経営が苦しくても、辞めるに辞められない状況になっています。一方で、飲食店営業としてドリンクの原価率など、経営の要改善点に気付くことも多く、M&A仲介やコンサルの必要性を感じていました。

辞めて起業も考えたことはありましたが、家族のことなど考えるとそこには至らずにいましたが、社内で新規事業開発プログラムの募集があり、そこに応募することで形になっていきました。

“業界全体を良くするためのM&A”にするために、飲食店の経営状況を詳細に分析
新規事業開発プログラムはどのようなものだったのでしょうか

(白石)昨年秋から開始した新しい取組で、社内で事業案を募集し、専門家のサポートを受けながらブラッシュアップしていくプログラムです。定期的な勉強会や審査会を経て、当初300超の応募があったなかで、最終4案件に絞られたうちの1つが私の事業案になります。

事業としての実現可能性はもちろんですが、コロナ禍で飲食業界の火が消えようとしている中、飲食店業界全体の再編・再興に貢献できる事業案であったことも評価されたポイントでした。ちょうどサントリーが発信していた「人生には、飲食店がいる」というメッセージとも合致していました。

プログラムの中で、どのように案件はブラッシュアップされていったのでしょうか

(白石)業務時間のうち、一定割合を新規事業開発にかけても良いという許可をいただいていたので、事業者ヒアリングなどを進めていきました。その中で、特にコロナ禍を経て、M&Aは右から左へ仲介するだけではダメだと強く感じるようになりました。

実際に、バイアウトをした後、その店舗が廃業しているケースが散見されているのです。仲介会社としてはディールが成立すれば収入が入りますが、サントリーとしてやるのであれば、ちゃんと業界全体を良くするための、飲食を後世に残すためのM&Aをしなければならない。なので、仲介と並行して、バイアウト後に事業価値を高める手法を、より具体的に検討を進めていきました。

バイアウト後の事業価値を高める手法とは、どういったものでしょうか

(白石)ベースとなるのは、12項目による経営診断です。通常のM&A仲介では、簡易的な財務診断しか実施されないなか、我々は飲食店経営における重要指標として、ドリンク・フード原価、採用・労務管理、業態ライフサイクル…等の12項目にて、経営の現状を詳細に分析します。そのことによって、買い手側が自社事業として統合・成長させられるかどうかも含めて意思決定ができるようになります。

M&Aという特殊な業態ゆえ、”出向起業”での実施を事務局も全面サポート
サントリーの本業とも親和性が高そうですが、出向起業に至った背景をお伺いできますか

(白石)社内事業として検討もしましたが、M&Aという事業特性上、機密情報を扱うことも多く、コンプライアンスリスクも高い事業であることから、少なくとも別会社で実施した方がよいのではという話になりました。また、サントリーだけでは解決できない飲食業界全体の課題を解決する事業であるため、子会社でもなく独立してやるという前提で、出向起業制度の活用をサントリーの事務局にもサポートいただきました。

新規事業開発プログラムの事務局が、出向起業制度の活用をサポートしてくれたのですね

(白石)そうですね。この事業がどうやったら上手くいくかを最優先に、各部署との交渉なども全面的にサポートしてくれました。会社としては独立しましたが、財務的なリターンではなく、飲食業界全体を良くするという形で、出向元にも貢献できるのではないかと思います。

現在はどのような体制で進められているのでしょうか

(白石)10年前から、この事業アイデアを相談していたメンバーが副社長として参加しています。元営業マンのメンバーや代理店契約を結んでいる協業先などと一緒に買い手・売り手探しを進めています。

メンバーやパートナー先、それぞれが経験やノウハウを活かすことで、財務以外の部分での企業診断、経営統合するときに何をすべきか、明確な仕様書を短期間で提供できることが自社の強みだと考えています。我々が関わることで増やせるバリューがあること、例えばスタッフの確保や離職率を下げるための飲食店版401kのような制度導入を支援するパートナー提携先があることなども強みになっていると思います。

Frontier M&A Partners メンバー
売れないものを売れるようにしていく、単なる仲介に留まらないサポートを
今後、事業を拡大していく上での課題になる点はありますか

(白石)コロナ禍以降、飲食業界全体として厳しい状況なので、後継者不足は顕著です。ですので、12項目の経営診断とは別に、案件を買いやすくする、あるいは後継者を増やすといった取組も必要だと考えていて、”サブリース化”と、”人材育成”を案として考えています。

サブリース化とは、チェーン店を全店舗は買えないが、1店舗の店長として経営を始めてみたいという人材を集めて、1店舗ずつ割り振り、コンサルティングチームを付けて店舗毎グロースさせていくようなスキームです。案件サイズを細かくし、リスクを下げることで、買いやすくする取組です。

人材育成については、飲食店経営に関する学校のようなものを作れるとよいかなと。教育プログラムの受講生が、サブリース案件で店長になるなどしていくことで、自ら買い手を作っていくことなどで、後継者不足という事業拡大の課題を解決していく方法を検討中です。

まさに業界課題の解決にフォーカスしているのですね。それは既存のM&A仲介会社ではできないのでしょうか

(白石)やろうと思えばできると思いますが、面倒なんじゃないですかね。もっと大規模な案件や、飲食以外の方が、比較的簡単に売り上げが立つと思います。我々は飲食業界のノウハウがあり、飲食業界が好きで、飲食業界に携わりたい人材を集めているので、他社が一から同じようなことをやろうとするほどのメリットは無いのだと思います。

我々は、普通にやったら売れないものを再生していくことを大切にしたいと思っていますので、売れるものを売っていくという通常の会社とは方向性が違うのかもしれませんね。

出向起業という制度について、何か思うところはありますでしょうか

(白石)あってよかったと思っています。辞めずに独立できたこともありますし、今後のキャリアを考えるきっかけとなりました。私はいわゆる団塊ジュニア世代ですが、人生100年時代において、まだこの先20年、30年とどういうキャリアを描いていくか。出向起業を活用することによって、新たな可能性を描けたのではないかと思っています。

最後に、今後の意気込みを聞かせてください

(白石)飲食店を後世に残していくために、未来の外食のスタイル、外食産業で働く人の職場環境改善にもつながるようなM&Aを進めたいと考えています。

業界再編の一端を担い、外食業界の価値向上を実現させてみせます!

白石 隆氏

しらいし たかし

代表取締役社長

自己紹介/略歴:

1998年にサントリーホールディングスに入社。
四国支店、大阪支社、東海支社と一貫して飲食店営業に従事。その間、約1,200社の経営課題解決や成長戦略サポートに従事し、多くの企業が成長を実現した。
2022年9月、東海支店長職を辞し、サントリーホールディングス社の歴史上初の社内ベンチャーとして起業。

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「外食特化型M&A仲介・後継者発掘・経営支援事業」について

弊社は外食産業バリューチェーンに特化したM&A仲介会社です。
M&Aというと、ハゲタカとか、乗っ取りとかのイメージを持つ方も多いと思いますが、我々は飲食産業の再編を加速させ、価値ある産業にすることを目的とした、社会問題解決型M&A会社です。

<提供するサービス>
①外食産業専門M&A仲介
・成長支援型M&A(コロナ渦で止まった成長を外部資本を注入し加速させる)
・事業継承(後継者問題解決)型M&A
・再生型M&A(外部スポンサーと再生を目指す)
②プレM&Aコンサルティング(会社を売りやすい状態に整える)
③外食経営大学院の運営

会社概要

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