佐々木 健人氏(株式会社LAWN)

LAWN
”IT”の経験を積むことで生まれた新規事業のアイデア
出向起業に至った経緯を教えていただけますか。

南海電鉄に入社して8年目になります。元々、街づくりに関わりたいと思って南海電鉄を志望しており、入社後、沿線エリアでテナント誘致などの再開発事業を2年、ショッピングセンターなんばCITYの販促企画・店舗営業を2年と主に不動産関連の業務に従事してきました。

ちょうどなんばCITYでの業務している頃、キャッシュレス・電子決済のブームが始まり、担当者として色んな電子決済事業の責任者とお話をさせていただく機会がありました。私自身ベンチャー企業の方とお話しする機会が初めてで、今は統合されてしまいましたが、Origami Payの事業責任者の方から、事業に対する思いを聞かせていただき、とても感銘を受けました。

電子決済を通じて、日本を変えたいという大志を抱かれている姿をみて、今後どの業界でも“IT化“がキーになると感じました。”IT“を活用することが、個人的な成長だけでなく、南海電鉄の成長にも寄与できると思いましたので、人事担当の方に相談をして、畑違いではありますが、IT部門へ出向する機会をいただきました。そこでは不動産賃貸システムの更新プロジェクトなどを経験し、現状でもまだまだ未熟ですが、システム開発のディレクションもできるようになりました。

IT部門へ出向して2年が経ったころ、社内で新規事業プログラムの募集が始まったんです。その頃の私は、趣味であるテニスもIT化が進めばもっといいのにと思うところもあり、経験を積む中で“IT”の可能性を実感していましたので、この掛け合わせができないかと、ひとりでこそこそと誰に出すわけでもない企画書を練っていたタイミングでもありました。

そこにこの出向起業制度など、いろんなタイミングが重なって、今に至ります。

Origami Payの担当者との出会いが意識を変える大きなきっかけになったんですね。

“キャッシュレス”というキーワードが一気に広がった時期でしたが、キャッシュレスの本当の価値はなんだろうと考えたんです。なんばCITYでお客様から代金としてお札をお預かりしてお釣りの小銭をお渡しする。この小銭を準備する、換金することに手数料やコストが掛かりますよね。

“現金”を扱うことによるコストは日本全体で8兆円と言われています。現金をキャッシュレス化することで、その部分がゼロになり、その分を成長産業への新たな投資が可能になる。また、クレジットカードの手数料に比べてもその他のキャッシュレスの手数料は一般的に低くなります。キャッシュレス決済の場合は手数料ではなく、データ活用にマネタイズポイントがあるので、社会的コストである手数料をなくしたいという展望を聞かせていただいて、非常にワクワクしたことを覚えています。

最初に作成された企画書はどういう内容だったんでしょうか。

原点は変わっていないので、ITを活用したテニスコート予約やプレーヤーのマッチングをするというサービスに大きな差異はありません。変わったのは、ミッションでしょうか。始まりが消費者目線、私自身がこういうサービスが欲しいというアイデアから始まりましたので、事業化するにあたっては、この事業で変えられる世界、目指すところの“ミッション”を検討しました。まずは自分と向き合って、なぜテニスをするのか。自分が楽になる方法を作り出すのではなく、他の人にもメリットがある事業化を選択するのはなぜか。

私自身はテニス自体の楽しさに加え、人との繋がりも楽しんでいます。30代になるとそれぞれライフステージも変わってきて、学生時代のような繋がりは保ちにくくなります。テニスがあれば、定期的に会うきっかけにもなり繋がりは続いていきます。また、新しい人と出会ってもテニスをすれば一気に心の距離は縮まります。この「人をつなぐ力」もテニスの魅力として、他の人にも伝えていきたい、プログラムを通じてメンターに自分の思いをぶつけながら、ミッションを練っていきました。

仕事、家庭、その次の”サードプレイス”となる場所の提供を目指して
出来上がったミッションを教えていただけますか。

仕事、家庭がファースト・セカンドで、その次の場所。仕事場や家では見せられない姿や感情が出せるそういう場所があると、人生がより豊かになるのではないかと思っています。

想いを言語化して作り上げた「ミッション」ですが、営業活動における武器にもなっていると思います。事業者さんもテニスの予約が面倒だから利用者が遠ざかる、そのことは理解していただいても、そこ止まりになってしまう。そういうときは、テニスを通じて何をしていきたいのか、我々のミッションを伝えるようにしています。想いに共感してもらうことで、単なる営業先というより想いを共に実現するパートナーシップに近い関係を築けることを実感しています。

LAWN社が提供するサービスで解決できる課題を教えていただけますか。

サービスでは、コートの予約しやすさと、テニス相手のマッチング、見つけやすさを提供しています。今、テニスコートを予約するときは、運営事業者によって方法が様々です。WEBサイトを運用しているところもありますが、自治体だと電話受付だったり、特定の日時でテニスをしたいと思っても、多い場合は10件ぐらい異なる施設に連絡しなければ確保できないならない状況ですので、まずはこの予約のハードルを下げたいと思っています。

都市部は人口も多いですし、テニスコートもありますが、人口が多い分、予約が埋まりやすい。一方の郊外ではテニスコートの空きはありますが、テニスをするプレイヤー人口も少ない。マッチングサービスは都市部でも有用だと思っていますが、郊外の方でもニーズがあるのではないかと、今後検証してみたいと思っています。

また、テニスの大会は地域や団体主催で定期的に開催されているものがあるので、大会へのエントリーはしやすいかもしれませんが、日常練習で困っているケースが多いと思います。私自身、大阪に30年暮らしていますが、それでも声を掛けていつでも集まれるメンバーは減っています。転勤や引っ越しで地元を離れた方などはよりそういう状態なのではないでしょうか。

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マッチングサービスを通じて練習相手になった方と、その後も継続して練習するケースもあるんでしょうか。

よくあります。我々が関わらなくても繋がりを続けてもらいたいと思っています。結果、練習場所を探す人が増えて、テニスコートの需要が増えていく。最終的にその流れを目指しています。

いざテニスをしたいと思っても、場所と相手を見つけることがまず大変なんですね。そのテニス相手のマッチングはどのように行われているのでしょうか。

練習したい内容とそれぞれのレベル、を確認してそこが合うかどうかでしょうか。民間のテニススクールでもそうですが、一定のレベルの計り方があって、初級・中級・・・そのカテゴリは自己申告いただくことになりますが、それほど大きなミスマッチはないと思っています。ただ、控えめに申告する人が多いという傾向はありますね。

将来的には大会の記録や相手からの評価制度とかをいれていつでもベストマッチを作れるようにしたいですね。

ミスマッチの解消以外にもデータを活用できそうなことはイメージされていますか。

大会に参加された方の事後アンケートでは、大会のために練習頻度が増えた方、ガットを張り替えたと言う方が多いんです。例えば、ラケットって自分似合うものは使ってみないとわかりませんよね。国内にはラケットを扱うメーカーが7社ぐらいあるんですが、その人のプレースタイルや道具の使用履歴などの情報が蓄積されていけば、リコメンドできるのではないかと思っています。そういう情報はテニスショップやメーカー側にとっても利用価値がありますし、何より買い替え頻度に変化が生まれるかもしれませんよね。

テニスのラケットって丈夫で10年は使用できますので、そんなに買い換えるものではないんですが、大会に参加するために練習する、コートが必要になる、道具も変えてみようかなと考えるかもしれない。

レコメンドへの活用だけでなく、広告への活用等、マネタイズポイントは色々と考えられると思っています。

サービスを利用された方からの感想はいかがですか

このサービスが目指すところは共感いただいているので、事業の方向性は正しいと感じています。

テニスは大体4名いれば成立するのですが、このサービスを利用するのはそのうちの1名、幹事をする方がメインターゲットとなります。ですので、幹事を担う方が面倒だと思ってしまったら、このサービスは使ってもらえません。最終的には幹事という役割がなくても成り立つサービスにしていきたいですが、まずは幹事の負担を減らし、リピート率を上げていきたいと思います。

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LAWNメンバー 左から桝井氏、佐々木氏
チャレンジし続けることが実績につながる、認めてもらえる。1つ超えると、次のステップが生まれていく
ベンチャーの方との会話から将来への危機感を感じてIT部門へ異動。そして起業した今、危機感はまだありますか。

将来的な危機感は変わっていないのですが、行動できていなかったという状況からは抜け出して、結果を出すフェーズにまで来ることはできました。出向起業という形で、出向元企業から離れて、今回、出向起業制度に採択されたことは、事業を進めていくための背中を押してもらったと思っています。

起業したことで、何か変化はありましたか。

当事者意識を持つようになったことでしょうか。自身が掲げたこと、結果に対してコミットしていく必要がありますので、社内にいたときと比べて、当事者意識を圧倒的に持つようになりましたね。

大企業の方、将来の危機感を感じている方へメッセージをいただけますか。

大企業の中にいると、決まったベクトル・会社の方針がすでにあり、そこから外れたことをしてはいけないという暗黙のルールを感じますよね。しかし、それは幻想だと気づいたんです。自分で制限を決めずにチャレンジし続けることが実績につながる、認めてもらえる。1つ超えると、次のステップが生まれていき、出来ないと思っていたことができるようになりました。今後、それが会社の方針になることだってあるかもしれない。

不動産事業、IT、今の新規事業、この経験やキャリアはバラバラだなと自分でも思っていましたが、起業した今、結果的にどれも必要な知識で、今に至る道を作ってくれた経験になったと思っています。

今のご自身が新しいことを始めるような場にいなくても、やりたいことがあるならば、どんな小さいことからでも動き続けてほしい、小さくてもチャンスがあるなら挑戦してみることを勧めたいですね。今、とても楽しいです。

佐々木 健人氏

ささき けんと

代表取締役社長

自己紹介/略歴:

関西学院大学商学部卒業後、2014年に南海電気鉄道(株)入社。
ニュータウン再開発業務や商業施設運営業務に従事。
2018年に、IT部門を担うグループ会社にて社内業務システム開発プロジェクトを担当。
出身企業内の新規事業開発プロジェクトを経て、
2021年に株式会社LAWNを創業。代表取締役に就任。

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「デジタルの力でプレーヤーと施設をつなぐテニスプラットフォーム事業」について

「コート予約」と「相手の確保」の手間よりプレイヤーがテニスを諦め、需要が潜在化している一方、テニス施設側はプレイヤーにリーチすることができず、機会損失が発生しています。


本事業では、プレイヤーの行動特性やコートの空き状況をWEBプラットフォームに蓄積し、プレイヤー同士、プレイヤーと施設、プレイヤーと関連事業者をマッチングすることで、テニス市場の活性化を目指します。また「健康長寿のスポーツ」と言われるテニスプレイヤー市場活性化を通じて、短期的にはコロナ禍における運動不足解消、長期的には健康長寿増進による社会保障費拡大の抑制など、社会的価値のある事業としての役割を担うことも目指しています。

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