栗山 裕和氏(株式会社ポンデテック)

半年で6つの事業を作っては潰す、そんな体験は大企業の中ではできなかった
”支援側”から”プレイヤー側”へ、自身のポジションが移ることで初めて気付いた大企業アセットの存在
栗山さんの経歴について教えていただけますか。

2010年に関西電力株式会社へ入社し、営業、燃料調達、電力需給計画策定などの職を歴任した後、アメリカのビジネススクールに留学してMBAを取得しました。帰国後は関西電力のK4 VenturesというCVC運営、ベンチャー投資側の業務を半年ぐらい経験し、その後2020年3月に”出向起業”を行い、支援側からプレイヤー側に移り6ヶ月がたった…というのが今の状況です。

支援側からプレイヤー側になって気付いた・感じたことはありますか。

支援側にいた時も、お金以外の支援、いわゆるハンズオンでどういった付加価値がだせるのか、というのが関西電力やK4 Venturesの課題でした。しかし、大企業の中にいると、スタートアップ側が何を必要としているのか、本当の意味で理解できていなかった気がします。

今、自身がプレイヤー側になり、大企業が持つ”信頼”や”コネクション”の有り難みを、身をもって感じています。例えば、お客さま候補や、パートナー候補の会社にコンタクトをするとき、スタートアップが正面からノックしても、なかなかライトパーソンに巡り会えません。こういった時、関西電力のような大企業の中にいたならば、営業を通してもらうことで、適切な担当者と一定の信頼関係を築いた状態からスタートできる。これは、特にBtoB案件で大企業がもつ大きな強みであると思いますね。

アセットとニーズをつなげることで、ひとつでも多くの課題を解決していく
ポンデテックさんの事業概要を教えていただけますか。

世の中の活用しきれていないアセットとニーズをつなげ、新たな価値を創出していくことが我々の事業です。その最初の事業として、法人中古PCというアセットと、プログラミング教育ニーズの高まり、という2つをつなぐ事業を立ち上げています。

プログラミング教育の義務化に従って、民間のプログラミング教室の数は急増しています。プログラミング教育には一定以上のスペックのPCが必要ですが、安価かつ大量に高性能なPCを供給できる仕組みが現時点では十分整備されていませんでした。そこで、法人のハイスペックなリースアップPCを一定ロットで回収・リファービッシュ(再生)し、プログラミング教室や保護者に提供するモデルを実証しています。

安価に高性能な再生PCを供給できる強みを生かし、今後は、プログラミング教育のみならず、デジタルトランスフォーメーションの推進にも貢献していきたいと考えています。

ポンデテック_チーム
ポンデテックメンバー 左から栗山 裕和氏、代表取締役の岩田 貴文氏
現在のビジネスモデルに行き着くまでの半年間、かなりピポッドを繰り返したと伺いましたが。

2020年3月に出向してから、事業案を考えては複数の事業案を並行しながらプロトタイピングしては検証し、無理だと判断しては潰す、といったことを繰り返していました。

実は、現在の事業は5つ目か6つ目の事業案だったんです。活用しきれていないアセットとニーズをつなぐというコンセプト自体は一緒ですが、色々とやってみた結果、目の前の課題が明確であり、将来的に出向元のリソースを活用できそうな領域も見えてきました。法人の中古PCというアセットを起点として、解決できる課題をどんどん拡げていきたいなと思っています。

リーンスタートアップを実践し、新規事業人材として成長する
半年で4~5つの事業案を潰すというスピード感は、かなりの苦労があったと思います。

正直、苦労して検討した事業案において、顧客ニーズが実際には存在しないことに気付く瞬間は、かなりつらいものがありました。ただ、まずは小さく・素早くやってみて、早めに失敗して気付く。この経験自体が、大企業の中では経験できないものであり、非常にやりがいを感じています。

振り返ってみると、大企業の中にいたら、”まずやってみよう”とはなかなか言えなかったですね。決してそれが悪いとは言いませんが、そう簡単に失敗はできないので、そもそもやってみる前のリサーチに半年から1年間はかけてしまいます。また、企業名を掲げる以上、ある程度のクオリティが必要になりますので、ニーズを検証する前にプロダクトを作り込んでしまう、ということもありがちだったなと思います。

出向元は、ポンデテックさんにどういったことを期待していると思いますか。

関西電力としても、新規事業を作れるようにならないといけないという状況にあり、実際に新規事業を経験した人材が必要だ…という文脈があります。もちろんこの事業自体を育てて大きくしていくことは求められていますが、中長期的な人材育成の一貫として、送り出してもらっている部分もあると思います。今現在、絶賛リーンスタートアップ中ですが、新規事業人材としての成長を確かに感じています。

今後、同じように出向起業を検討しようとする方に、コメントをいただけますか。

大企業の中にいると、そもそも新規事業に携わることができる人は限られていますし、その人が得られる経験も限られてしまうのが実情です。やはり、本当の意味でリーンスタートアップを行うには、大企業側から切り離す必要があるのかなと思います。会社に戻るオプションがあるこの仕組みによって、もっと多くの人が新規事業にチャレンジできるといいなと思います。

栗山 裕和氏

くりやま ひろかず

副社長

自己紹介/略歴:

一橋大学商学部を卒業後、2010年に関西電力株式会社入社。
入社後は燃料室にて石油・石炭・LNGの調達および運用を担当。
2017年よりアメリカのEmory University Goizueta Business SchoolにMBA留学。
帰国後、ベンチャー投資を経験し、自分自身でビジネスを開発する側に転身。

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「再生PCを用いたICT環境構築事業」について

使用済みPCの内、国内で再流通しているPCの割合は30%程度で、残りは部品が回収されたり海外に輸出されています。一方、日本では10代のPC所持率・利用率ともに先進国で最下位という現状があります。

本事業では企業から排出されるパソコンをリファービッシュ(再生)して、ICT教育用途としてプログラミング教室等を通じて販売することで”ICT教育の遅れ”という課題解決を目指しています。

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