福島 渚氏(Roca Japan株式会社)
Q.これまでのキャリアについて教えてください。
大学院では東アジアを中心とした都市史を専門とする研究室に在籍後、2016年に新たに創設された新規事業担当の採用枠で清水建設株式会社に入社しました。新規事業担当として、土木事業本部、営業総本部、フロンティア開発室宇宙開発部に在籍しました。
入社後はどの部署でも一貫して、宇宙開発事業のうち小型ロケット打上げに関するプロジェクトを担当してきたのですが、プロジェクトを通じて、異業種・世代の違い・多国籍といったダイバーシティに溢れる環境の中で様々な方々と協業する機会があり、多様性の産む新たな価値観があるということを身をもって学びました。
様々な価値観に触れ、世界から日本を見た時に技術や文化の価値を知る経験から、自身としても新たな挑戦をしてみたい、事業を起こしてみたいと強く思うようになりました。そんな時、2022年に清水建設でコーポレートベンチャリング制度が始まり、以前より業務時間外で検討を進めていた事業案をもって応募し、事業化することになりました。
Q.アイデアを事業化、出向起業へと行動に移された理由を教えてください。
社外研修で社会課題を解決するための新規事業を模索するプログラムに参加する機会があり、研修を通じて伝統工芸職人の方々と交流したことが、起業に至る事業アイデアを考えるきっかけになりました。
たくさんの伝統工芸職人の方々とお話させていただく中、彼らは皆、非常に高い技術と熱意を持ちながらも、マーケティングや情報発信において困難を抱えていることが強く印象に残りました。この出会いを通じて、職人たちがものづくりに集中できる環境を提供することが、日本の伝統工芸の発展や継承にとって必要ではないかとその重要性を強く感じました。
研修終了後も勤務時間外に多くの職人の方と出会い、彼らの思いや悩みを直接聞く場を持つようになりました。現場に足を運ぶようになってからは技術継承の課題を解決することの社会的意義をより強く感じるようになり、持続可能な方法としての事業化の実現に向けて動き出しました。
Q.出向起業制度の活用にあたって、社内調整はどのように進められたのでしょうか。
出向起業制度は、起業家のリスクを軽減しつつ、スタートアップとしての柔軟性を保つことができます。私自身の給与の心配をせずに、資金調達や市場調査、製品テストなど、事業初期の重要なステップに集中できることは非常に大きなアドバンテージになります。また、所属元企業は日本だけでなく、世界に向けてのグローバルなネットワークを持っています。そのネットワークを活かすことで、Roca Japanの製品開発と市場展開を加速させることができるのではと考えました。
所属元企業との調整は、主にコーポレートベンチャリング制度の事務局が中心となって対応してくれました。制度の詳細や手続きについての説明や調整など、事務局が適宜サポートしてくださったおかげで、私自身が苦労することはなく、ありがたかったです。
Q.出向起業への応募に対して、所属企業の周りの社員の方、家族や身近な方の反応はいかがでしたか。
所属元企業の方々の反応は非常にポジティブで、出向起業制度の存在は知らなかったものの、その内容・支援内容を知ると事業案さえあれば自身も是非挑戦してみたいという声もありました。
また多くの方から「早く失敗して、パワーアップして早く帰ってきてくれ」という言葉をいただきました。 この言葉には、新しい挑戦を恐れずに経験を積んで成長し、願わくば再び同じプロジェクトで事業に貢献してほしいという期待が込められており、大変嬉しく、励みになりました。
身近な方々の反応も非常に好意的で、家族からは、出向起業を活用したことで「生活へのリスクがヘッジでき、心から応援できて嬉しい」と言ってもらいました。
Q.まず実現したいこと、目標やビジョンがあれば教えてください。
まずは、照明のセミオーダーメイドに特化したサービスを展開し、職人の技術を最大限に生かしながら、顧客のニーズに応える製品を開発します。顧客の嗜好やライフスタイルに合わせたカスタマイズが可能なオーダーシステムを構築し、伝統工芸品の魅力を広めることを目指します。
また長期的には、伝統工芸品のオーダーメイドサービスを通じて、日本の伝統技術を次世代に継承し、職人の技術を継承するエコシステムを構築することを目指しています。 伝統工芸の需要を喚起し、若い世代の職人を育成することで、持続可能な伝統工芸産業の発展を支援していきたいですね。
私たちのミッションは「世界中へ、日本の”一点もの”をあつらえる」です。 次世代に継承される価値あるサービスを創り、日本の伝統と美を世界中に広めることで、利用者が自分らしい豊かな日々を過ごせる一助になればと思っています。
Q.出向起業にあたっての意気込みをお聞かせください。
この取り組みが所属元企業の中で新しい挑戦をする一つの参考になればと思っていますし、出向起業制度を活用することで、従来の事業枠を超えた新しいビジネスモデルの構築や、市場への迅速な展開を実現する実例となって同じようなことを目指す仲間たちの背中を押せればと考えています。
一起業家として、新しい価値を創造し、社会をより豊かにしていきたいと思っています。日本社会が新しい挑戦をしやすい環境になるよう、さまざまな起業の方法があるという一例になっていければとうれしいですね。
「プレミアム市場に向けた伝統工芸オーダーメイド実証事業」について
多くの伝統工芸職人は、一人親方としてマーケティングにも対応する必要があり、肝心のものづくりに集中できない現状があります。
一方で、デザイン性の高いインテリアに興味を持つ潜在顧客にとっては、職人の情報発信の少なさや職人の選出・発注の複雑さが購入の障害となっています。
Roca Japan株式会社では、これらの課題を解決するため、職人と顧客をつなぐ伝統工芸品に特化したオーダーメイドサービスを構築し、日本の伝統工芸職人と世界中の顧客をつなぐオーダーメイドサービスを展開します。
福島 渚氏
代表取締役社長
自己紹介/略歴:
2016年 東京大学工学系研究科 修了 2016年 清水建設株式会社 入社 土木事業本部、営業総本部、フロンティア開発室に在籍し、宇宙開発事業に従事 2024年 Roca Japan株式会社 創業、同社代表取締役
会社概要
所在地 | 東京都江東区潮見2丁目8−13 |
WEBサイト | https://www.roca-jp.com/ |