森川 善基氏(verbal and dialogue株式会社)
写真帳業務は”超めんどう”。これを解決するツールを開発したい
―まずは森川さんのキャリアについてお伺いできますか。
新卒後、大手メーカー2社で、工程管理、調達、新工場立ち上げなどを経験してきました。
虹技は3社目のキャリアで、入社して7年目になります。虹技では、主にプラント設計や現場監督、装置の検査管理業務などを担当してきました。
―出向起業でどのような事業を立ち上げているのでしょうか。
プラント業界を含め建設業界全体として、慢性的に人手不足の問題があり、一人当たりの生産性向上が必須の課題となっています。
特にアナログ作業が残っており、既存ツールでなかなか解決ができていない業務として”写真帳”という業務が存在します。私もこの業務を担当していた中で、現場で非常に苦労が多いことから、写真帳業務をDX化するSaaSを開発し、プラント業界の生産性向上に貢献するため事業を立ち上げました。
―写真帳業務とは、具体的にどのような業務なのでしょうか。
例えばごみ焼却施設を建設する場合、発注者は自治体、元請は大手プラントエンジニアリング企業、協力会社に機器・設備のベンダーと工事業者がいる構造です。発注者である自治体に対して、建設工事を記録した工事写真帳、機器設備の製造工程を記録した工程写真帳を納品する必要があり、その都度、現場に行って写真撮影、事務所に戻ってパソコンに写真データを取り込み、日報と一緒に手作業で写真整理、そして写真帳作成作業を行うのですが、この写真業務だけで毎日1〜2時間、月40時間程度はこの業務に費やしています。
ベンダーさんも含めて、相当の人数が相当な時間をかけてこの業務を行っているのですが、アナログな業務プロセスを抱えたままの場面が多く、効率化されていません。プラント業界は大型の公募案件が多いので、発注者からの納品基準もなかなか統一されないことも、デジタル化を阻んでいます。
既存の写真帳業務ソフトも存在するのですが、プラントのように元請と多数のベンダーが連携し合って写真帳を作る業務に適用することができませんでした。
―ご自身が写真帳業務を担当される中で気付いた課題なんですね。
はい。そしてこの業務は一言でいうと「超めんどう」なんです。ですが、担当者としては困っていても、なぜか、業界の課題として認識されていなかった。
それは写真帳業務というのは単純に写真を撮って貼る、”簡単な作業”と認識されているからなのかなと。その中でも特にプラント業界ではアナログな業務プロセスを抱えたままの場面が多いので、この非効率は担当者にしかわからないということが大きいのかもしれません。
4年間暖めていた企画。出向起業のスキームを知り、一気に起業に向けて動き出す
―この事業アイデアは、いつ頃から考えていたのでしょうか。
4年ほど前から課題を解決したいという思いはありました。使用している既存ソフトが使いづらいと感じていて、取引先とも会話をする中で、自分で作ればいいのでは…と考えるようになりました。
ただそうは思ってもなかなか行動には移せず、悶々とした企画を温め続ける日々を送っていました。そんななか、ちょうど今年の正月頃に、新聞で出向起業をされた方の記事を読みました。この出向起業のスキームであれば、起業に対して感じていた不安を払拭して事業にトライできるのではないかと、会社の社長、上司に相談させて頂き、一気に動き出しました。
―出向起業のどういうポイントが良いと感じましたか。
やはり私も家庭がある中で、起業というものに踏み切る自信が無かったんです。漠然とした不安もあり、一歩目が動けなかった。もちろんこれから苦労していくと思うのですが、その一歩目を後押ししてくれる制度だなと感じました。
また、虹技としても、これまで活発に新規事業への取り組みが行われてきた訳ではありませんので、経済産業省の仕組みで後押しをもらいながら新規事業を進めていくのは、社内でやるよりもよいのではないかと前向きに評価いただき、出向起業を認めてもらえる方向に至りました。
―事業のブラッシュアップはどのように進めてこられたのでしょうか。
課題を感じるようになった4年間、写真業務に対する課題や不満を取引先と話をしてきていたので、出向起業をすることを決めてからは、その課題や不満をより詳細に分析し、システムの仕様設計を進めていきました。地元のIT企業等と連携しながら、出向起業の補助金を活用して最初のプロダクトをローンチしていく予定です。
出向元のリソースも活用しながら、業界全体に展開し、プラットフォームを目指す
―今後、どういった事業展開を計画していますか。
プラント業界は慢性的に人手不足の問題があり、そのための生産性向上に貢献していきたいと思っております。業務プロセスの中で最も課題が課題として認識されていない写真帳業務を入り口として、他の業務の効率化にも展開していきたいと考えています。
―出向元とは、どういった協力関係を築いているのでしょうか。
虹技が有しているネットワークは、十分に活用させていただきたいと思っています。虹技およびその取引先は最初の顧客候補として、今後もヒアリング・営業を進めます。私自身は営業経験がありませんので、元社の役員のコネクションや営業サポートなども協力を依頼しながら、進めていきたいと考えています。結果として、虹技のDXを進めることにもつながるということで、お互いWin-Winな関係でありたいです。
―まだ出向起業が始まって間もないと思いますが、起業した実感はありますか。
起業する前まではとにかく起業に対する不安しかありませんでした。ただそこから出向起業制度を知り、社内にも納得してもらい、補助金に採択され、元社のリソースも活用しながら事業を進められるという現在、不安は全くありません。
写真帳業務以外にも受発注業務の効率化など、解決したい課題やアイデアは色々ありますので、プラント業界におけるプラットフォームを担える会社になっていきたいと思っています。非常に楽しみで、自分でもワクワクしています。
森川 善基氏
代表取締役
自己紹介/略歴:
早稲田大学人間科学部卒業。
2016年に虹技株式会社入社後、環境エンジニアリング事業部にて、ごみ焼却プラントの設計・調達・現場監督、プラント送風機の検査管理業務に従事。
2022年に建設テック領域の事業開発を行うverbal and dialogue株式会社を創業。代表取締役に就任。
「プラント業界向けデジタル工事写真帳データSaaSサービス」について
超めんどうな写真帳業務。
事務所に戻って作業することなく、現場で写真撮影のみで完了。自動で工事写真帳を作成。弊社SaaSサービスを通じて、写真帳業務の時間・労力コストを87%削減に繋げます。
プラント業界はアナログな業務プロセスを抱えたままの場面が多く、慢性的に人手不足の問題があり、一人当たりの生産性向上が必須の課題となっています。
本事業では、建設テック領域の事業開発を行い、プラント業界の生産性向上に貢献して参ります。
会社概要
所在地 | 兵庫県姫路市大津区勘兵衛町3丁目12 |
WEBサイト | https://vnd.co.jp/ |
問合せ先 | morikawa@vnd.co.jp |