先行事例#5 フォローアップ調査報告書 公開
“出向起業補助金事業”は、これまで令和元年度補正予算から令和5年度当初予算までの4期に渡って実施し、一般枠38件、MBO型起業枠3件(2年目採択件数を除く)の合計41件の出向起業家を採択・支援してきました。
「出向起業の”その後”がどうなっているか?」
この度、令和4年度までに出向起業を行った33件(MBO型起業枠を除く)を対象に、”その後”に関するフォローアップアンケートを実施しました。
「出向起業を認めてもらう交渉材料が欲しい」「出向起業をしたいと社員から相談を受けたので理解したい」「大企業内の新規事業・経営人材育成を加速させたい」など、出向起業の活用を考えている方々にご覧いただき、大企業等における出向起業(を含むカーブアウト・スピンアウト施策)の制度化・定着等に繋がれば幸いです。
本調査の目的/調査対象
“出向起業”を実施して一定期間が経過した案件の現状を把握し、出向起業スキームの有効性や課題を整理・情報提供することで、出向起業の認知度を更に高めるとともに、実際に出向起業で新規事業を立ち上げたい大企業等社員と、出向起業を承認する管理職等とのコミュニケーションの円滑化の一助とすることを目的とする。
(調査対象)
- WEBアンケート方式により令和4年度までに出向起業を行った33件(MBO型起業枠を除く)を対象に全数調査を行い、回収率は33件中32件。2023年8月末日時点の情報を調査した。
- 自由回答については、アンケート回答および個別ヒアリングの内容を一部抜粋し、個社の特定を避ける目的にて、一部表現の修正・加工を行っている場合がある。
調査結果(概要)
徐々にスピンアウト・子会社化の事例が生まれつつあり、32件中24件は外部資金調達を実施している
Q:出向等の状況 (N=32)
- 過去に出向起業を行った32件について、既に出向等が終了している案件は11件(退職・独立7件、子会社化3件、廃業・清算1件)。それ以外の21件は、出向等を継続しています。
- 資金調達(Equity、J-KISS等)を実施している案件は24件、うちシリーズAが2件、シリーズBが1件となり、それぞれ外部リソースを活用しながら事業開発を加速しています。
- 出向元からの出資の有無については、出資無しの案件が20件と最も多く、それ以外の12件のうち、子会社化した案件(3件)を除く9件は、自社または自社関与のCVC等を経由した出資を受けています。
出向起業前に、顧客ニーズの検証は最低限必要。出向起業の”目的”は多岐に渡り、出向元の事業・組織課題によって異なる
Q:出向起業の振り返り(出向起業するまで)(N=32)
- 出向起業前から1〜2年かけて起業アイデアを簡易に検証している案件が多く、起業準備時点で、ほぼ全件においてビジネスモデル立案・ユーザーヒアリングを実施されていました。また、その時点で外部投資家へのピッチを行っている案件は、早期に外部資金調達を達成している案件が多く(12件中11件)、外部からのフィードバックが重要であることが示唆されます。
- 出向元大企業との間で設定された出向起業の目的については、①大企業のガバナンスを外すことによる新規事業開発の加速、②経営人材育成、③社内風土改革、の順となっています。
- 既存事業へのシナジーについては、直接的な関連事業というよりは、比較的中長期・間接的なシナジー(当該事業が成長することで、既存事業の市場自体が拡がる可能性がある等)を目的に設定しているケースが多いことも出向起業ならではの特徴と言えそうです。また、新規事業に投じる予算が無い場合に、外部資金・リソースを活用するための手段としたケースも見受けられました。
出向起業によって、事業開発や人材開発は加速。出向元との定性的な”目的”の目線合わせができていることが重要
Q:出向起業の振り返り(出向期間中)(N=32)
- 出向期間中の殆どの事業者が、事業推進および自身の人材開発に対して効果があったと回答がありました。
- 個社がそれぞれ設定した“出向起業の目的”の達成度についてはばらつきがあるものの、単なる数値・KPI目標ではなく、出向元の経営課題・事業課題に紐付く定性的な目的・目標について目線合わせができている場合、お互いにとってメリットがある形となっているように見受けられました。
スピンアウト・子会社化した案件についても、継続的に出向元と関係性を維持し、社外での経験や人脈を還元している
Q:出向期間終了後(N=11)
- 出向等が終了した11件(退職・独立7件、子会社化3件、廃業・清算1件)について、それぞれ出向元との関係性は一定継続しています。
- 退職・独立した場合においても、出向元への発注等の売上による貢献や、外部人材との交流機会の創出等の外部エコシステムとの接続による貢献等を行っている事例は存在します。
- 子会社化したケースなどでは、元社の社内ベンチャー制度のメンターを務めるなどで、経験を還元しているケースもあります。出向元自身が、出向者が外部で得た経験や人脈などを、どう活用できるかも合わせて検討していくことが必要だと考えられます。
本調査結果の全体版は、下記よりご確認ください。
出向起業の”その後”フォローアップ調査報告書
令和4年度までに出向起業を行った事業者(MBO型起業枠を除く)を対象に実施したフォローアップアンケートの調査結果をご紹介しています。