岸本 明弘氏(DO・CHANGE株式会社)

Q.これまでのキャリアについて教えてください。

学生時代は阪神淡路大震災の震災ボランティアをしながら、ゼミにてまちづくりを研究していました。

清水建設株式会社に入社後は、現場事務からスタートし、民間建築営業、不動産営業部、総務部など幅広い職務を経験しました。 現場では、作業員の方がどのようにすれば気持ちよく働けるのかを考え、改善することを学び、営業では得意先のためになるように考えて営業活動を行い、バックオフィスでは業務効率化を目指して、関係部署に働きかけたりと常に考えて動く「考動」を、不動産取引や不動産投資事業で事業収支、債権回収事業で事業リスクについてを、いま振り返れば新規事業を起業するのに必要なことを実践で学んできたキャリアでした。

Q.出向起業にて行う事業について(事業概要)を教えてください。

私が実施するのは、ポリテック香川株式会社と香川高等専門学校が共同で開発した特許技術、具体的には被覆細廃線を廃油で揚げ、被覆を炭化させた上で真空状態の減圧条件下で乾燥させると、被膜が自然にはがれて中の銅線を簡単に取り出せるようになる。例えるなら「天ぷら」のイメージなのですが、その技術等を利用して、有価金属を抽出して売却する事業になります。被覆の部分も炭化物となり活性炭への活用を検討しており、社会課題の解決と資源循環の一翼を担える事業になると考えています。

2021年に知人経由で特許技術を開発したポリテック香川の当時の社長から、炭化させた被覆部分の樹脂の用途について相談を受けました。この時、初めて廃被覆電線から銅を抽出する特許技術があること、また廃棄物になる被覆の樹脂も炭化物として再利用できる可能性があることを知り、「ゴミを資源に変えることができる」と考えたことが事業化へのきっかけです。そのアイデア、特許技術を実用化する事業案で、2022年にできた社内起業公募制度へ応募、審査を経て合格をいただくことができました。

Q.アイデアを事業化、出向起業へと行動に移された理由を教えてください。

起業準備を進める中、2023年5月に外部の方から紹介いただいたガーナで野焼きの撲滅とサスティナブル社会の創造を目指している画家の長坂真護さんとの出会いがありました。開発途上国では、被覆廃線にガソリン等をかけ火で焼いて銅を取り出す「野焼き」と呼ばれる手法で有価金属を抽出していますが、野焼きは、健康被害と大気汚染を引き起こす要因にもなっています。そこで、我々の技術の有効性を確認するため、2023年12月にガーナへ渡航、実証実験を行いました。実験の際に抽出された銅のサンプルを回収し日本の大手商社に持ち込んだところ、銅スクラップとして販売できる品質を確認することができました。

左:炭化物、右:特許申請中の技術で回収した銅線

スラム街で実施した実証実験では現地ワーカーの方とのディスカッションも行ったのですが、ワーカーの方から日本語で「ありがとう」と言われたことは今も心に残っています。我々の技術を活用することで、資源循環だけでなく社会課題の解決につながる道筋が見えたと感じ、合格後、約1年半の準備期間を経て起業を決めました。

まずはパートナー候補がいる、ガーナとケニアで事業を行う予定です。

Q.出向起業制度の活用にあたって、社内調整はどのように進められたのでしょうか。

所属元企業では、社内起業制度がありますので、起業自体は比較的自由に活動ができます。ただ、出資を受けない状態での起業になりますので、自分の人件費以外の経費は自己資金での支出を念頭におかないといけません。起業後の活動費をどう捻出するかを検討した結果、出向起業制度を利用しようと考えました。

出向起業制度の利用は社内では第1期生となるため、既存部署との調整など多くは語れませんが、いわゆるファーストペンギンならではの苦労は経験しました…。笑

Q.出向起業への応募に対して、所属企業の周りの社員の方、家族や身近な方の反応はいかがでしたか。

職場で応募していることを伝えると「応援しているよ!」という声をたくさんいただきました。 また、所属企業の海外の事業部門から事業に関して問い合わせをいただき、本業以外の領域展開活動に繋がりました。

家族からは「やりたいことがあるなら、やったほうが良い」と、気持ちよく背中を押してもらいました。

Q.まず実現したいこと、目標やビジョンがあれば教えてください。

この事業は、環境に優しい方法で銅を回収できて雇用も創出できます。将来的にはアフリカでリサイクルヤードを経営することも視野に入れていますが、直接ヤードを経営するのが難しい場合は、既存のヤード業者に技術を提供して手数料を得る仕組みも考えています。

ガーナやケニアだけでなく、ナイジェリア、また外部の方からはタイやインドネシアでも同様の問題があること、「野焼き」が行われているとの話を聞きました。あらゆる地域での横展開を進め、グローバルな社会課題の解決に役に立っていきたいと思います。

Q.出向起業にあたっての意気込みをお聞かせください。

ガーナで『ありがとう』と日本語で言われた言葉が嬉しく、日々忘れることなく事業活動を行っています。

利益追及だけでなく、社会貢献との両立を諭す『論語と算盤』、これは所属元企業である清水建設の社是で、かつて相談役であった渋沢栄一翁の言葉です。私も、自らの事業を通じて国や世界が繫栄するように社会を変えたいです。

DO・CHANGE=やれば、変わる

「廃油を利用した特許技術で被覆廃線から有価金属を抽出する事業」について

開発途上国では、「野焼き」(被覆廃線にガソリン等をかけ火で焼いて銅を取り出す)と呼ばれる手法で有価金属を抽出していますが、野焼きは、健康被害や大気汚染を引き起こす要因にもなっています。

そこで我々の技術を用いて現地ワーカーと共に実証実験を実施、回収した銅のサンプルは日本の大手商社に持ち込み、銅スクラップとして販売できる品質を担保できていることを確認しました。

まずはパートナー候補がいる、ガーナとケニアで本事業を進めていきます。

岸本 明弘氏

きしもと あきひろ

代表取締役

自己紹介/略歴:

1998年清水建設株式会社入社。
現場での原価管理や事務をスタートに営業、総務、人事、不動産仲介、不動産開発、債権回収事業等を幅広く経験。
2022年社内起業制度発足に伴い、応募。審査合格後、起業活動開始。2023年香川高等専門学校客員研究員、
2024年DO・CHANGE株式会社設立 代表取締役就任。

Profile Picture

会社概要

所在地香川県善通寺市原田町1454
WEBサイトhttps://dochange.co.jp/
問合せdochange2023@dochange.co.jp