中井 貴士氏/黒澤 丈朗氏(DiveRadGel株式会社)
Q.これまでのキャリアについて教えてください。
(中井氏)高いリンパ節送達能と免疫誘導能を有するがんワクチンのDDS(ドラッグデリバリーシステム)であるヒアルロン酸ナノゲル(ソナノス™)を発明した後、ソナノス™を導入した旭化成株式会社に入社。入社後はアプリケーション開発と技術マーケティングを担当、研究者として大学との共同研究を主導して、出向起業者となるDiveRadGel株式会社にとってのコア技術となる複合的がん免疫療法を見出しました。
(黒澤氏)旭化成にてソナノス™事業に従事するまでは、コンサルティングファームや金融ファンドで勤務してきました。転職後はそれらの経験を活かし、中井氏とともにソナノス™およびソナノス™を用いた複合的がん免疫療法に関して、世界各国の大手製薬企業へのマーケティングを担当してきました。中井氏とはその後、DiveRadGel株式会社を共に創業、現在は同社の事業開発と経営を担当しています。
Q.新規事業(申請事業)のアイデアはどのように着想されたのでしょうか? 何かきっかけとなった出来事などがあれば教えてください。
ソナノス™は、既存のDDSシステムやナノ粒子と比較して、リンパ節送達能だけでなく薬物の可溶化や徐放化など他にない様々な機能を有しており、中でも、リンパ節送達ならびにそれに続く免疫誘導においては、昨今のデリバリーシステムで解決しきれていない課題が多く残っていることから、注目されている分野でした。
また、がん免疫分野では単一療法ではがんを寛解できず、治療のブースト機能を担うような高効率のがんワクチンが求められている状況の中、遺伝子改変T細胞治療との併用を試みるため、大学との共同研究を行なったことが事業化へのきっかけとなりました。
Q.アイデアを事業化、出向起業へと行動に移された理由を教えてください。
複合的がん免疫療法として革新的な結果は得たものの、この免疫分野では、我々が得た動物実験モデルでの検証結果だけでは、ヒトでの臨床試験を実施しないと有効性を判断できないという壁がありました。臨床試験には多額の資金が必要であり、旭化成は化学メーカーであることから臨床試験を実施するのが困難であるという背景から、新会社を設立して旭化成や大学以外の様々な機関と協力する形で本開発を継続していくことになりました。
役割分担とリスクの所在を明確化するためにも、設立する新会社と化学メーカーである旭化成とは切り分けることで検討を進めていましたが、一方で、旭化成としてもこの技術ががんに苦しむ患者様の治療法に革命をもたらす可能性について期待しており、事業としては切り分けつつも応援できる形を模索していました。
方法について検討を進める中で出向起業という枠組みを知り、所属元起業と我々の新会社の両者にとってWin-Winとなる最適な選択肢である考え、この制度を活用した起業をすることになりました。
Q.出向起業制度の活用にあたって、社内調整はどのように進められたのでしょうか。
出向起業制度は所属元企業としても全く前例のない初めての試みだったため、ソナノス™を開発する事業部だけでなく、コーポレートの様々な部署の方々に制度作りのご協力を頂きました。意思決定の場面では、とても勇気が必要となるプロジェクトでしたが、専務を中心に様々な難しい論点を議論し、最終的に皆が納得する形でGoサインを頂くことが出来ました。
本プロジェクトにご尽力頂いた皆様にこの場を借りて、改めて深く御礼申し上げます。
Q.出向起業への応募に対して、所属企業の周りの社員の方、ご家族や身近な方の反応はいかがでしたか。
事業部やコーポレート部門の皆様から応援いただいておりました。
出向起業という枠組みは、日本の製造業の従来のビジネスモデルである物売りやコト売りとは異なる、新たな事業開発のモデルとなる可能性を秘めています。旭化成がこれからそのような選択肢を持てる会社になってほしいと願う人が多かったことが、調整期間を通して応援いただけた要因と感じています。
起業という言葉を聞けばどうしても不安や心配が大きいと思うのですが、出向という形で出向元がサポートしてくれるという話をしたところ、安心して我々の挑戦を応援する気持ちが強くなったようです。
Q.まず実現したいこと、目標やビジョンがあれば教えてください。
革新的ながん治療を開発して一日でも早く世界中の患者様に届けることをミッションとしていますので、そのための第一段階として、日本で初めてとなる複合的がん免疫治療の臨床試験実施のための、非臨床GLP試験の実施や確かな品質保証に基づいた製剤製造をマイルストンとして据え、事業を進めていきます。
Q.出向起業にあたっての意気込みをお聞かせください。
昨今の日本の株式市場では、ヘルスケア・バイオ市場に対する評価や目線が厳しくなっており、創薬ベンチャーが多額の費用を要する革新的な治療を開発する難易度が増していることを実感しています。
しかしながら、がんの治療は完成しておらず、新たな治療法を望む患者様が世界中に存在していることは事実です。そして、我々にはそれぞれ発明者としてソナノス™を治療に役立て、患者様の一助になりたいという強い思いがあります。
たとえ難しい市況や状況であったとしても、ミッションを据えて全速力で走れる組織を作り上げ、バイオ業界を牽引する企業となることを目指して、日々精進していきます。
「非臨床フェーズにおける革新的複合がん免疫療法の実証事業」について
当社は旭化成が開発した高機能医薬品添加剤であるソナノス™を用いたがんワクチンを軸とする、複合的がん免疫療法を開発する創薬ベンチャー企業です。
「複合的」の名の通り、従来のがん免疫療法の課題を解決する又は効果を増強する役割を担う、ソナノス™がんワクチンを併用する治療法を開発します。
中井 貴士氏
代表取締役社長
自己紹介/略歴:
京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、大手製薬企業にて長年にわたり創薬研究に従事。 主席研究員として抗体技術、DDS技術などの開発を行う。東京医科歯科大学大学院にて ヒアルロン酸ナノゲルを発明しPh.Dを取得。以降DDSを用いた医薬品開発に携わる。 旭化成株式会社においてリードエキスパートとしてヒアルロン酸ナノゲルの事業化に参画し、 がん免疫領域での大学との共同研究にて見出されたがんワクチンの臨床試験を実施すべく、創業メンバーを集め、本事業を推進。
黒澤 丈朗氏
取締役副社長
自己紹介/略歴:
臨床検査技師。 国立台湾大学、ボルドー大学、筑波大学大学院(MD of Agro-BioMedical Science)卒業後、 PEファンドにてアナリスト業務に従事。その後経営コンサルティングファームにて、PEファンド投資先向けの企業価値向上サービスを提供。 その後に旭化成株式会社にてソナノスの海外展開(マーケティング及び営業)を担い、がんワクチンの医師主導治験計画を策定し、本事業の創業に携わる。
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