大江 洋治郎氏(TRUSTART株式会社)

銀行員として業界を俯瞰して見ていたからこそ作れる、商習慣に縛られないサービス
法人営業の経験から新規事業開発の必要性を実感し、自身が非効率を感じた不動産DX事業を発案
大江さんの経歴について教えていただけますか。

2010年に三菱UFJ信託銀行へ入社して、最初の6年間は個人向けのプライベートバンクの営業として、遺言書作成や遺産整理、亡くなった方の不動産売買に関する仲介等に携わっていました。その後、法人営業の部署に移って融資を担当していたのですが、当然ですがお客様は資金の使途が無いとお金は借りてくれません。お客様と一緒に新規事業を考える、くらいに事業に踏み込んでいかないと、銀行も厳しいなと感じるようになりました。

そういう思いもあって、早稲田のビジネススクールに入学してアントレプレナーのゼミに入りました。その中で、誰かに新規事業を提案するではなく、むしろ新規事業を自分でやってみたいという思いが強くなり、2年前に新規事業開発の部署に異動しました。異動は出来たものの、やはり銀行内で新規事業開発をするというのは、なかなかスピード感を上げるのが難しいと感じる部分もあり。そんな時に出向起業というスキームで新規事業を行う社内公募があり、その第1号として参加させていただいた状況です。

TRUSTARTさんの事業概要を教えていただけますか。

不動産業界の非効率をテクノロジーで解決していくことが当社のビジョンで、その最初の一歩として、「不動産調査」業務のDX事業を開発中です。この事業は、ビジネススクール時代から検討していました。信託銀行には不動産部門があり、私も個人向け営業の時代に経験していますが、仕事量が多い職種なんです。なんでそんなに忙しいのかなと因数分解をしていると、調査周りの業務にアナログな非効率が残っていて。そこを解決できるツールが世の中になかったので、今、それを自分で作ろうとしています。

また、その大量に不動産調査ができる仕組みを構築することで、蓄積できるデータがあります。そのデータを活用した、例えばリユースだったり、仲介だったり、データ活用事業も並行して開発していきたいと考えています。

TRUSTART_市場
TRUSTARTを取り巻く市場環境
信託銀行で培ったスキルや経験を活かした、顧客視点のサービス開発
今のビジネスに、行員としての経験とビジネススクールでの学びの経験が生かされていますね。

その通りです。プライベートバンク担当時に関わっていた不動産売買等での経験から、子供世代が親の遺品整理、空き家処分など、物の処分に困っている方を間近で見ていて、そういう経験はデータの活用方法の検討などに全部生きているなと思っています。また、ビジネススクールのつながりや色々な業種の方の話も聞けるようになったので、そういった人脈の掛け算でバリューが出せる点もあるのではと思っています。

大江さんが考える銀行出身者のスタートアップ、銀行出身者であるご自身の強みはなんでしょうか

“技術”や“マーケティング”をバックボーンに持つ起業家はたくさんいると思いますが、私は、“ファイナンス”や“アカウンティング”をバックボーンに持っています。法人営業として多様な業界を見てきたこと、その特徴や商流を知っていることもあり、お客様に対してコンサル的な面からも営業ができるのが銀行出身者である私の強みかなと思います。

また、銀行は業界を俯瞰的に見ることができる立場にあります。不動産業界は既存の商慣習に縛られているところが多く、そこに起因する非効率も多いのですが、私は不動産を直接ディールする立場に無いということで、商慣習にとらわれない事業開発ができていると思います。

銀行員だからこそ、業界課題を俯瞰して把握し、それを解決するサービスが提案できるのですね。

まさに、自分自身であったらいいな、あったら使うなというサービスを開発しています。ここまで社内外に対してかなりヒアリングを進めてきました。社内の不動産関連部署、賃貸業者、不動産管理業者、メンテナンス会社等、不動産に関わるあらゆるところにヒアリングをして、一定程度、欲しいユーザーが見えてきているところです。

出向元のネットワークがあるということは大きかったでしょうか。

大きかったです。やはり銀行の看板があれば基本的に会えない人はいませんでした。以前はそのことにそれほどありがたみを感じていませんでしたが、出向起業後に営業していると、TRUSTARTですって問い合わせフォームから連絡しても、何の会社なのか疑われたり。。銀行の看板って大きいんだなと出向起業をして、そのありがたみを痛感しました。

組織としての制約を、出向起業で乗り越え、スピード感をもった事業開発を進める
銀行内で新規事業をやろうとした際、課題を感じたのはどういうところでしょうか。

やはり組織としての制約が大きいですね。色んな法律や規制に縛られている部分もありますし、どうしてもコンサバに人が育ってしまう環境です。また、そもそも新規事業開発を経験したことのある人材がほぼいないので、社内の説得や調整には時間を要します。

それからシステム上の制約もあります。銀行内で事業開発をしていると、基本的に自社のシステム仕様や社内基準の縛りがかかってきて、その対応だけでリソースが割かれてしまいます。そもそもそのサービスを顧客が使ってくれるかどうか分からない段階では、もっと自由な環境で、顧客のUXを最優先に開発していく必要があると思いました。

その課題は、出向起業というスキームで解決できていますか。 

そうですね。まだ出向起業したばかりですが、期待していた通り、スピード感をもって自由にやれています。また、出向起業した後も出向元からは、販路開拓に協力してもらったりしてとても助かっており、まだ実績もないシード期のスタートアップにも関わらず、業界最大手のトップにいきなり会えるように繋いでもらえる。これは、大企業の外に出ていながら、大企業に籍を置いていることの強みの一つだと思います。

個人的には、この出向起業という制度は恒久化して欲しいくらい良い制度だと思います。実際、何もなくてもチャレンジする人は自身でやると思うのですが、チャレンジする”器”がないと一歩踏み出せない人は一定数いると思います。私の様な出向起業の事例が増えていくことで、自分もやってみようかなという人が増えてくることを私も期待しています。

どちらかというとコンサバと言われる組織にいる人へメッセージをお願いできますか。

出向起業をしたことで、自分で全部決められるという環境にあります。もちろん責任感や緊張感もありますが、大企業の中にいては味わえない経験ができていますし、めちゃくちゃ楽しいですね。

大企業にいても10年後や20年後に会社が本当にあるのかどうか分からないと思うんです。今、チャレンジし続ける人でなければ、どんな企業や業種でも生き残れない。自分のマーケットバリューを高めていければ、自分で決められることもどんどん増えていきますので、どんどんチャレンジしましょうと言いたいです。

大江 洋治郎氏

おおえ ようじろう

代表取締役

自己紹介/略歴:

2010年に三菱UFJ信託銀行入社。
リテール営業、法人営業に従事後、新規事業開発部署にて
ローン商品の組成や社内ビジネスアイデアコンテストの企画・運営を経験。
2020年に不動産テック領域の事業開発を行うTRUSTART株式会社を創業。代表取締役に就任。

Profile Picture
「不動産業界DXによるビジネスモデル変革事業」について

まだまだ「テクノロジー」の活用余地がある日本の不動産業界。
TRUSTARTは「不動産×テクノロジー×人」の力で、不動産の調査、データ収集を始め、不動産に関わるビジネスのDX化にチャレンジ。

我々は不動産は金融、士業、その他多くのビジネスと親和性が高いと考え、幅広い業界で不動産の活用可能性を模索し、日本産業経済の成長に貢献していきます。

TRUSTART_ビジネスモデル

会社概要

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URLhttps://www.trustart.co.jp/